レイコーン
マールはどこかに雨宿りできる場所がないかと周囲を見渡した。
バスステーションから少し離れた校舎には屋根がある。
「あそこにいよう。」
そう言うとマールは足を進めた。
雨宿りできる場所に着くと
大きなため息が出た。
「はぁ…。」
バスが来ていないかと
バス停にちらりちらりと視線を送る、
あからさまに疲れている10歳の少年。
「よく見えないなぁ。」
大きな雨粒が無数に降り注ぎ
半透明なガラス板が置いてあるかのように
マールの視界をさえぎった。
校舎は警備員すらいないようで沈黙を保っている。
普段ならまだ明るいはずのこの時間帯も今日は厚い雲が覆い、
空がサングラスをつけているかのようだ。
ドンドン暗くなる空をとめることはできない。
目を見開いてもバス停の方を良く見ることができなかった。
校舎にひとり残されていると言うことはなんて寂しいものだろうか・・・。
何もする事のない時間はただ冷たく、ぬくもりがない。
その上、思考は停止し
なんだか半分眠っているかのような錯覚を引き起こす。
ここにいるマールも
目を開けながら寝ているかのようにぼんやりと
寂しくない想像をするばかり。