レイコーン
そんな疑問が脳裏を走る間に
バスの運転手はここに長く、いたくないのか
逃げるようにそそくさと、走り去って行った。

排ガスの臭いと濡れた路面が
混じりなんとも言えない空気が心を蝕む。
 

「みんな置いていくんだな。」
 

そんなバスの姿が同級生とかぶり
ため息が大粒の涙のように零れ落ちた。
本心が素直に言えないマールの性格は本当に厄介だ。


「あっ!」

 

実は、今、マールは気がついたことがある。
 

「お代を払ってない。」
 

多分、あれはスクールバスだから大丈夫だろうと、
軽い気持ちで納得し
とりあえず、帰路に着くことにした。

 

街はレンガの建物が多く並んだ古い街で、
さっきのバスはその街のわき道へと入って数分走ってきた。

 

細い道だ。
車一台分走れる位の路地。

 

路地の脇を硬く覆っている
レンガをつたって滴り落ちる雨は
どことなく赤い色をしているように見え
その、真下にたまった水溜りには触れたいと思う人はいないだろう。

 
空を見上げても屋根が空を覆い天が狭く
よくバスでこんな道に入って来れたものだと
マールは少しだけ感心した。
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