レイコーン
そうこうしている間にマールは屋敷前にある門に着いた。
屋敷は黒い鉄柵で囲まれていて、マールの身長よりもはるかに高い。
それにもかかわらず、柵の色が夜の草原の色とマッチしていて
遠くからではすぐに柵があることまではわからない。
門も鉄柵でできていて鉄格子の間は
人の頭が入るくらい余裕があり、奥の屋敷が見える。
門の上部を眺めても屋敷の景観を損ねないつくりになっていて
檻と空の景色が一対の作品となっていた。
入り口より、少し手前には
赤く彩られたゴミ箱のようなものがあり、
その上には小さな猫の像が一体置かれ、まっすぐな視線で月を眺めている。
「コレさっきの猫にそっくりだな。門の番人みたいだ」
そう言いながら石像の頭をなでた。
「インターホンとか、ないのかな?」
これだけ立派な屋敷だ。
もしかしたら監視カメラで観察しているかもしれない。
そう思ったマールは、その場でうろうろしだした。
だが一向に門が開く気配はない。
マールはどうして良いかわからずとりあえず
門のオリの間から顔を出し、奥にある屋敷をにらみつけた。
「お~~~い」
そこから見える屋敷は
ずいぶんと古く、まるで寄り添うように
ツタが絡んでいるのがわかった。