レイコーン

ツタはどこか生き生きとしいて、
まるで何かから屋敷を守るように生気にあふれている。
屋敷からは神秘的な香がした。

 

「はぁ。」

 

インターホンの場所がわからないまま
マールは悩んだ。

 

「カメラ、ないのかな?」

 

コレだけ大きな屋敷だと防犯カメラの一つ二つあってもおかしくない。
とりあえず、気がついてくれといわんばかりの行動を少々とったが、
しばらくすると自分のしていた行動を忠告する冷静な目がどこかにあった。

 
門を開かせる事をあきらめたマールは
檻から離れ、もと来た道に振り返ってみた。

 

「わぉ!」

 

屋敷の丘からは見える空には
先ほど通ってきた大きな草原と、
マールが住む街が入り混じり広がっていた。
 
空に映る地上の街たち。
空と大地に広がる街の風景は何とも言えない景色を作り出していた。
 
街はまるで蜃気楼のように草原に重なっている。
星空は青く輝き、街の空は雲が覆い、晴れた空と雨雲を同時に目にすることができる。

 

重なる世界を目に宿すとは、
なんとも言えない光景だ。

 

 
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