レイコーン
コン、コン。

暖炉の反対側にある方から、木のドアを軽く叩く音が聞こえた。

 

ガチャ・・・

 

「失礼します。マスター、準備が完了しました。」

 

ニコスが執事らしく老人に向かって言と、
尾が二本のクロネコの姿となり甘えた声を鳴らし、彼の主人の元へと近づいていった。

 

「ミャ~」

 

マールの目の前をあの黒猫が通る。
さっき、メビウス通りで道案内してくれた黒猫だ。
しかも尾が2本ある。
ドクは黒猫を抱きかかえると頭をなでながら言う。

 

「準備が整ったか!ありがとう。ありがとう。」

 

ドクは、部屋の入り口の方へと移動し、マールに言った。

 

「マール君、ぜひ君に見せたいものがあるのじゃ。ついておいで。」

 

マールは
ただ、ただ、唖然とその様子を見ていただけだった。

 

扉を開いた先にある廊下は真っ暗で真夜中の学校のようだ。
老人が歩くたびに廊下の両脇にあるろうそくが灯り
最低限足元を確認するだけの明かりが出来上がる。

 

ドクの靴は硬い鉱石で造られているらしく、
廊下を歩くたび、カツンカツンと、高い音が響いていた。

 

マールの目は
先を歩くドクの猫に釘付けだ。
あの、二つの尾を持つ猫は
ニコスなのか、それともただの化け猫なのか。


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