レイコーン
兵士はものすごく嬉しそうに話してくれたが、マールはただただ唖然としていた。
そんなとき黒猫姿のニコスが、
マールの肩にひょいっと乗っかり耳元でささやいた。
「じゃ、後でな。」
「え?うん。がんばってね。」
ニコスはマールの肩から降りるとトコトコと、控え室のほうへと行ってしまった。
兵士のクロガネル武勇伝は続く。
「でもね。一人娘には弱かったらしいんだ。男は時にはそんな弱点があってもいいと思うんだよね。いつも怖いのにそんなところがとてもキュートだよ。」
「…あの。」
何時までもこのマシンガンの玉は尽きる気配がないのでフタをした。
このおしゃべりな兵隊さんには悪いがあまり付き合っていられない。
「王の部屋って何処ですか?僕、そこに呼ばれているのですが。」
「あそこの通路を行った先にある部屋だよ。でね、話の続きだけど娘さん実は。…あれ?」
マールは、兵士に礼を言うとさっさと逃げ出した。
兵隊さんに教えてもらった道は驚くほどシーンとしていた。
カーペットが敷いてあるにもかかわらず自分の足音がよく聞こえる。
ボスっ。ボスっ。ボスっ。
芝生の中を歩くような独特な音。
ひとりで歩くには広すぎる真っ白な回廊は、世界に一人しか人間がいないかのような
錯覚を与え、妙に揺らいで見えた。
進む先のほうから何やら小声で誰かと誰かが話す声が聞こえてくる。
扉が軽く開いているようだ。マールは声のするほうをそっと覗き込んでみた。