月と太陽の事件簿12/新幹線殺人事件 静岡‐掛川間49・1キロの謎
達郎は窓口にいた職員と話し込んでいた。

遅かったと思ったが、どこか様子がおかしい。

達郎が切符を購入した気配がないのだ。

「じゃあ僕がさっき聞いたことは確かなんですね?」

達郎が念を押すように言うと、職員は大きくうなずいた。

その顔には大きな大きな笑顔が浮かんでいる。

「はい。この場合には乗り継ぎ割引きが適用されますので」

乗り継ぎ割引き?

聞き慣れない単語が、あたしの耳に残る。

特急東海1号に乗ると何かがあるのだろうか。

あたしは達郎と大きな笑顔の職員の間に割って入った。

「あの、東海1号って特別な電車なんですか?」

いま思えばあたしのこの訊き方はマズかった。

「東海1号じたいは、特に変わった電車ではありませんよ」

坊主頭の真面目そうな職員は、笑顔をさらに大きくさせた。

「ただこの路線は昔から東京と名古屋を結んでいました。始まりは1955年ですから、半世紀以上の歴史があるわけですね」

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