花の魔女

喫茶店の前には白い猫がのんびりと座りこんでひなたぼっこをしていた。

ログハウス調の家の屋根の下に、“今日のおすすめ”と書かれたボードが置いてあり、その隣にガラス窓のついた扉がある。

ナーベルは意外と重い扉を少し手間どいながら開け、中へ入った。


店はお客でいっぱいで、丸テーブルの上にごちゃごちゃと飲み物が置かれ、各々お喋りを楽しんでいた。

ナーベルはお客の間をすり抜けて、二階へ通じる階段にやっとのことでたどり着いた。


ナーベルは緊張してきて、深呼吸をして息を整えるとギシギシと音をたてて階段を登った。


二階は一階よりもかなり空いていた。

二階は予約席で、お金がある人しか取らないからだ。


ナーベルははたと、ここで困ってしまった。


(お相手の顔を知らないわ)


ナーベルはぐるっと店内を見回してみた。

皆、誰かしら人を連れており、一人でいる人は誰もいない。


仕方なく帰って相手の特徴をアナベラに教えてもらおうと思い、階段を降りようとしたその時。


肩をぐっと掴まれて、若い男性の声がした。

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