花の魔女
「ナーベルだろ?黒い髪は一人しかいないからすぐわかった」
ナーベルはごくりと息を飲み、ドキドキしながらゆっくり振り向いた。
内心、会うのが少し怖かったのだ。
イメージでは、お金持ちではよくいる太った体つきの、白い肌をした人物だった。
ところが、目の前にいる男性は、ナーベルのイメージとは全く逆だと言っていいほどの姿をしていた。
すっきりとした体格で、肌も人並みに焼けている。
髪はアナベラにのきれいな金髪をそのまま短くしたようで、艶めいていた。
しかし何よりナーベルに好印象を与えたのは、彼の優しそうな、青色のきれいな瞳だった。
ナーベルは自分が思わずイメージとは全く違う人物を眺めまわしていることに気づき、申し訳なく思ってうつ向いた。
「立ち話も何だし」
彼は全く気にしていないかったようで、近くのテーブルの予約札を外した。
「ここに座って」
ナーベルは少し緊張してしまい、ぎこちなくテーブルを挟んで彼の前に座った。
いつもより椅子が固く感じた。
「でもよかったよ。君の正体に母が気づかなくて」
ナーベルが椅子に座るなり放たれた彼の言葉に、ナーベルはわけがわからず首をひねった。
「私の正体?どう意味なの、それ?」