花の魔女


ラディアンはナーベルに淡々と話し始めた。


ラディアンの母も昔は魔女だったが、病にかかってからその力が衰えたこと。

自分が魔女として辛い目にあってきたので、ラディアンが一人前の魔法使いになることを嫌がっていること。

そして普通は一般人と魔術者の見分けることができるが、今日はラディアンが感覚を鈍らせておいたので気づかなかった、ということ。


「きっと君が魔女だと母にばれたら、君は無理矢理別の人と一緒にされる。そしたら僕達は一人前にはなれないんだ。……だから」


ラディアンはそこまで言って、決まり悪そうにナーベルから目を逸らした。

ナーベルはそんなラディアンの様子を察し、そっと促した。


「それで?私はどうしたらいい?」


ラディアンは躊躇いがちにナーベルを見つめた。

青の瞳が不安気に揺れていて、それなのにナーベルはそんなラディアンをきれいだと思ってしまった。


「いいわよ。何でも話してちょうだい」


コーヒーカップに手を添えると、温かさは消えていて、中の黒い液体はもうすっかり冷えていることがわかった。

ナーベルの言葉に、ラディアンはやっと口を開く気になったらしく、揺れていた瞳は真っ直ぐにナーベルを見た。


「僕達が一人前になるには結婚する必要があるけど、その前に母が気づいたら終わりだ。だから、見つからないうちに今すぐにでも二人で別の場所に移っておきたい。どう?」




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