花の魔女
しかし、何でもお言いつけください、とは言われたものの、純粋なドニを危険な目にあわせるわけにはいかなかった。
なので、屋敷内で得られる噂などの情報を仕入れたら話してくれるように頼むと、ドニは不満そうな色をみせた。
「本当にそれだけでいいんですか?」
「いいんだ。それだけで十分。僕に情報を流していることがバレないように、くれぐれも気をつけて」
それでも不安そうに見つめてくるドニに、ラディアンは優しく彼の頭に手を置いた。
「話し相手ができただけでもずいぶんと気分が楽になったよ。ドニには感謝してる」
そう言ってやると、ドニは目を輝かせて喜んだ。
そしてさっそく近頃自分がやらかした失敗談や、他の給仕仲間の少年達のことを嬉々として話しだした。
ラディアンはそんなドニの笑顔にときおりナーベルを思い出し、そっと胸を痛めるのだった。