花の魔女
「ナーベル、起きなさい」
母のナイジェルの揺り起こす声に、ナーベルはゆっくりと目を開けた。
「今日は相手の方と会う日でしょう。早く準備しなさい」
「……」
朝一番に嫌なことを思い出して、ナーベルは起きあがると不機嫌な顔で櫛で髪をときはじめた。
ナイジェルはナーベルが準備し始めたのを確認すると、部屋を出ていった。
ナーベルはのそのそとベッドから這い出て、昨夜ナイジェルから渡されたドレスを手に取った。
昨日ナーベルが家に戻ると、ナイジェルはすでに事を知っていて、嫌だと言い張るナーベルに一晩中説教をしてのけた。
このドレスは村長からの贈り物で、本当ならナーベルのような普通の娘が袖を通すことはない代物だ。
絹でできた淡い水色のドレスは輝いていたが、ナーベルにとってはこれ以上ないほど重いものだった。
ナーベルはため息をつき、ゆっくりドレスに袖を通した。