偽りの結婚



しかし、次の瞬間息を飲む事実をモニカが口にした。


「だけど、残念ですわ。昨日のすりおろした林檎は、ラルフ様がシェイリーン様の為と申されて作ったものでしたのに」

「え……?」


何の前触れもなく暴露されたその事実に、一瞬思考がストップする。





いま…何て……?

ラルフが…あの林檎を……?


瞳を大きく見開き驚く。




「昨日シェイリーン様が眠りについた後、突然厨房にいらして、風邪に良い物は何かと料理長に尋ねていらしていました」


部屋を離れるとき公務に戻るから大人しく寝なさいって言ったのに…




「それで、料理長がラルフ様に簡単に作れて栄養がある林檎をすりおろしたものはどうかと提案したのです。おそらく、ラルフ様にキッチンに立たせて何かあれば大変だと思ったのでしょうね」

ふふっ…と笑いながら楽しそうに話すモニカ。




それとは対照的に、ますます驚きと戸惑いの表情をうかべた。







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