偽りの結婚



「まだ体調が良くなっていないんじゃないか?」


そんな私の想いなど気付くはずもなく、労るような言葉をかけるラルフにまた涙を浮かべそうになる。

優しくされると思い違いをしそう…

感情がこみ上げ、瞳に涙の膜が出来そうになったその時。





ピカッ―――ゴロゴロッ――――



「っ……!」


遠くで雷の落ちる音を聞き、ビクッと体を震わせる。

シーツをつかむ手は一層強くなった。

瞳にうっすらと浮かびかけた涙も引っ込んでしまう。

すると、ラルフが目を瞬かせて口を開く。



「シェイリーン、もしかして雷が苦手なのか?」


どこか悩んでいるような表情とは一変し、明らかに怯えたような表情をした私を察したラルフが呟く。

その声はどこか楽しげだった。



< 163 / 561 >

この作品をシェア

pagetop