偽りの結婚
今は遠くの方でしか雷の音が聞こえないが、近くで雷が落ちると思うと怖くてたまらない。
あの夜はディランがいてくれたから良かったものの、この王宮では恐怖を分かち合える友人さえいない。
せめてこれ以上天候が悪くなりませんように…
そう願いながら布団をギュッと握りしめていると、傍にいたラルフが動く気配がした。
「体調が万全になるまで寝ていた方が良い」
ラルフの言葉にほっとする。
しかし、ほっとしたのもつかの間―――
「ただし、僕たちの寝室でね」
そう言うと、ラルフは包まった布団ごと私を抱き上げる。
「きゃっ」
突然の浮遊感に襲われ、ラルフの腕の中にいるのだと気付くまでに時間がかかった。
軽々と抱き上げられた身体。
今きっと顔が赤いわ……
布団で顔が見えないことを幸に思う。
「ここは王宮の角部屋だから窓が多い。寝室なら窓は一つだし、まだましだろう?」
確かに窓が少ない方がありがたい。