偽りの結婚




しかし―――――――


「……雷なんて平気。それに本当にまだ風邪は完全に治っていないから、貴方にうつってしまう可能性があるわ」


精一杯の虚勢を張り、ラルフの申し出を断る。

本音を言うと窓の少ない部屋が良かったのだけど。




この部屋は一面窓が設けられており、晴れていればとても良い静養場所となるのだが、今日のような天候の悪い日は私にとって恐怖でしかない。

けれど、風邪が完治していないことも確かで…




ラルフは明日から公務でモルト王国に行く身だ。

王族同士の交流の場に王子がいなければ国の威信にかかるだろう。

ましてや親交の深いモルト王国となれば尚更だ。




「大丈夫、僕は風邪を引かないよ」


頭まですっぽりとかぶっていた布団から顔を出すと、こちらを見下ろし微笑んでいる。



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