偽りの結婚
「それって…どういう…」
多少混乱しており、返す言葉もたどたどしくなる。
「寝室に君がいないと寝付きが悪くてね」
「っ……!」
ラルフの言葉に顔を赤くする。
まるで私がいなければならない…と言っているようだ。
誰からも必要ないと言われた自分が目の前の男から必要とされている。
けれど、なんて残酷なんだろう……
結ばれることさえ許されない相手からこんな言葉を受けるとは。
けれど、それ以上に私の胸には喜びの気持ちが占めていた。
この一瞬は偽りの関係や、条件付きの結婚のことを忘れられた。
例え、ラルフが心の底から私を欲しているのではなくとも嬉しかった。