偽りの結婚
しかも、一応は結婚している身だ。
そんな場に行ったとしても煙たがれるし、何よりラルフと結婚した事に対しての厭味が容赦なく降りかかってくるだろうことが予想される。
けれど今回は純粋に文学が好きな人たちの集まるサロン。
恋愛や未来の伴侶に興味のある若い令嬢たちが来るとは考えにくかった。
若々しい場が苦手だったため、今回のサロンへの招待は本当に嬉しかった。
クイッ―――
「うん、やっと元気が出てきたみたいだ」
私の顎を上に向けて、ラルフは無邪気な笑顔を向ける。
上を見上げてやっと目線が合う程背の高いラルフを見て、頬に熱が集中するのを感じる。
さっき無理して笑っていたのがばれていたのかしら…
「今日は君を困らせる人たちがいないようだから楽しんでくるといい」
先日の令嬢たちの事を言っているのね…
ラルフはやはり、私が湖に落ちた原因は令嬢たちにあると思っているらしい。