偽りの結婚



「えぇ、行ってらっしゃい」


承諾したにも関わらずラルフは私を腕に抱いたままその場を離れようとしない。

やっぱり私がノルマン邸で迷ってしまうと思っているのかしら…




「大丈夫よ、貴方の目の届く場所にいるわ」


ふわりと微笑めば、ラルフが軽く目を見開く。

そして、自分もふわりと微笑んだかと思うと…




「早く済ませて戻ってくる」


チュ…と頬に触れるだけのキスを落とし、そんな台詞を吐くラルフ。

そして名残惜しそうにしながらも、やっとその場から動いた。





残された私は瞳を大きく開き、唖然とその場に立つ。




いっ今何が起こったの……!?




周りを見渡すと、私と同じように目を見開く令嬢たち。

その顔はどれも、信じられない…と言いたげな顔だった。




こんな場所でキスするなんて…

穴があったら入りたい。


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