偽りの結婚
「初めまして、シェイリーンの夫のラルフ・ランカスターです」
この国の国民ならばそんなこと言わずとも知っているだろうに、ラルフはわざとらしくそう名乗った。
その顔はニッコリと笑っていたが、先程私に向けたそれとは全く違うものだった。
笑顔にもかかわらず、ラルフの周りに冷気が漂っているのは気のせいだろうか…
いや、気のせいではないことは確かだ。
後ろを振り返ると、先程まで余裕の表情を向けていた男たちの顔が見る見るうちに焦りに変わっている。
あっ…えっ……と言葉にならない声を上げていた。
「妃が世話になったようだ」
予想以上に低く響くラルフの声に、男たちのヒッという小さな悲鳴が聞こえた。
ニコニコと紳士的な笑みを浮かべているだけに、その声にはゾッとするものがある。
「何か揉めていたようだが、シェイリーンに失礼があっただろうか」
紳士的な笑みはそのままに、騒動の核心に迫っていくラルフ。