偽りの結婚



「作ったっていう程のものじゃないんですけど。薬を飲むにはまず食事を取らないといけないと思って」


そう言って私は銀色の食器をラルフに手渡す。





「これは……君が?」


ラルフは軽く目を見開き、私の手からそれを受けとる。

私がラルフのために用意したのは、すりおろした林檎だった。



「えぇ…すりおろした林檎は栄養価も高いし、食べやすいでしょう?」

「………」


器の中を見つめたまま、黙り込んでしまったラルフ。




「食欲がなかったかしら…?」


ラルフが何も言ってくれないことに、少しばかり傷つく自分がいた。

しかし、熱が出て体がだるい時に食欲がわかないのは私も分かるため、何も言えない。

私がしゅんと悲しそうな表情をするのを見て、慌ててラルフは口を開く。


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