偽りの結婚



私が小さい頃お父様はいつもどうしてくれていたかしら。

幼いころの記憶をたどり、熱が出た時に父親がしてくれていたことを思い出す。



そう言えば……

不意にラルフの額と首元に手をあてる。

やっぱりまだ熱い・・・




「これは?」


不思議そうに見上げるラルフ。



「私が小さい頃、風邪を引いた時にいつもお父様がこうしてくれていたの。熱が下がると言うわけではないのだけど…」


ハロルドは私が風邪を引いた時にはいつも額と首元に手をあててくれていた。

その手は熱で熱くなった肌にはとてもひんやりと気持ちよく、人肌はとても安心したのを覚えている。

けれど、そんなの個人によって感じ方は違うだろうし…




ラルフにはあまり受け入れられなかったのかも、と思い手を放そうとすると―――



「このままで…気持ちいい……」


額を抑えていた手を抑えられ、目を閉じて気持ちよさそうにラルフは呟く。

良かった…と、胸を撫で下ろしていると、ラルフからフッと自嘲気味に笑みが漏れる。





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