偽りの結婚
「なっ、泣いて「泣いていないとは言わせないぞ。目元が赤い」
頬を包んでいた手をそのままに、親指の腹でそっと目元を撫でられる。
「………」
そう言われてしまっては、何も言えなくなる。
今日ばかりは部屋を明るく照らす綺麗な月夜も恨めしい。
「何があったんだ?パーティーでまた男に絡まれたのか?それともどこぞの令嬢にでも陰口をたたかれたか?」
もうこうなると、私が頑なに口を閉ざすことを知っているラルフは、自ら涙の原因を探る他ない。
次々と問われることは、パーティーでのことで。
ラルフはパーティーで何かあったのだと思っているのね。
「いいえ」
そう一言答えただけで、口をキュッと結ぶ。
言えない…
貴方とソフィア様の関係を知って、泣いていたなんて。