偽りの結婚
「シェイリーン、頼むから何故泣いていたのか教えてくれ」
俯きながら一言否定の言葉を零す私に、ラルフは少し厳しく問う。
今更令嬢たちの陰口で泣くはずもないし、男たちから絡まれたところで涙を流すこともない。
私が涙を流すことはそれ相応の事があった時。
ラルフもそれを知っていたため、私の身に起きたことが気になったのだろう。
「ラルフには関係ないことだから…」
ラルフと目線を合わせようとせず、小さい声で呟いた。
「関係なくてもだ」
紺碧の瞳が鋭く光り、声を強める。
それに弾かれたように感情が抑えられなくなったのは私の方だった。
「なんで私の事を気にするの?」
切なく…それでいて悲痛な声を上げてラルフに問いかける。
「ほっておけば良いじゃない」
吐き捨てる様に言った言葉に返って来たものは、私が今一番聞きたくない言葉だった。