偽りの結婚




「まだ、完全に回復していないのでしょう?明日はソフィア様が帰国なさる日だからちゃんと休まなきゃ」


無理やり笑顔を張り付けて、明るく振る舞おうとする。

矢継ぎ早に口から出る言葉は、ラルフに阻まれるのを恐れるかのように早口で話される。




「…と言われても、私がここにいたらゆっくり眠れないわよね」


ラルフの答えも待たずに、自己完結の言葉を並べる。



「シェイリーン」


次は、どこか苛立たしげな声を上げるラルフ。

俯いているため、表情は窺えないが、きっと怒っている。




「私は空いている部屋で寝ますから、ラルフはここで寝てください」


思いのほか冷たく響いた声に、一瞬体を強張らせるが、堰を切って出てくる言葉は止まることを知らない。





もう、嫌われてもいい…


嫌われた方がいい…



伏せた瞳はもうラルフを見ようとしなかった。


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