偽りの結婚
ラルフはシェイリーンとの思い出に浸り、クスッと笑う。
「しかし遅いな…」
シェイリーンの帰りが遅いのが気になり、書類に落としていた目を時計に向ける。
「書庫で読み耽っているのか?」
仕方ない迎えに行くか…と呟き、椅子から立ち上がる。
なかなか帰ってこないシェイリーンを迎えに行くために、書庫へ向かった。
人工的な光に照らされている廊下は、静まり返っている。
この時間ともなると、使用人たちも眠りにつくころで、廊下には誰もいないはずだった。
しかし―――
向う側から歩いてくる影が一つ。
段々と近づいてくるその人物の顔が明らかになる。
「あら、ラルフ」
明るい声を上げたのは、この時間帯に廊下を歩いているはずもない人だった。
「母上……」
溜め息交じりに呟く。