偽りの結婚




正直、会いたくはない人物だった。

会えば小言ばかりで、ニコニコと笑みを崩さずに言うものだから質が悪い。

独身の時は何度追いつめられたことか。

父上も助けてくれれば良いものの、すっかり尻に敷かれているらしい。




しかし、なぜこんな時間にこんなところをうろついているのだろうか。





「今あなたの部屋に行こうとしていたところなの」


リエナは不自然なくらいのニッコリ笑顔を作る。



……嫌な予感がする。

こういう時のリエナは、嫌な知らせしか持ってこない。

どうせ帰りが遅いだの、シェイリーンが可哀想だのという小言だろう。





「後にして下さい。僕もシェイリーンを迎えに、書庫へ向かうところなんです」


“シェイリーン”という言葉を強調して切り抜けようとするラルフ。

シェイリーンの事となればリエナも何も言わないことを知っていたため、これでリエナにつかまらないと思った。




しかし―――


< 444 / 561 >

この作品をシェア

pagetop