偽りの結婚
正直、会いたくはない人物だった。
会えば小言ばかりで、ニコニコと笑みを崩さずに言うものだから質が悪い。
独身の時は何度追いつめられたことか。
父上も助けてくれれば良いものの、すっかり尻に敷かれているらしい。
しかし、なぜこんな時間にこんなところをうろついているのだろうか。
「今あなたの部屋に行こうとしていたところなの」
リエナは不自然なくらいのニッコリ笑顔を作る。
……嫌な予感がする。
こういう時のリエナは、嫌な知らせしか持ってこない。
どうせ帰りが遅いだの、シェイリーンが可哀想だのという小言だろう。
「後にして下さい。僕もシェイリーンを迎えに、書庫へ向かうところなんです」
“シェイリーン”という言葉を強調して切り抜けようとするラルフ。
シェイリーンの事となればリエナも何も言わないことを知っていたため、これでリエナにつかまらないと思った。
しかし―――