偽りの結婚
「シェイリーンを諦めるつもりはない」
「分かっています」
ベルナルドは、諦めたように呟く。
そして、切ない表情を浮かべ、ゆっくりと話しだした。
「私たちはシェイリーンが弱みを見せてくれる数少ない友人ですが、シェイリーンの悲しみを癒すことはできません。悔しいが、それが出来るのは貴方だけだ」
苦々しく話した内容には、大切な人が悲しんでいるのに自分の力ではどうしようもない悔しさ、もどかしさ。
そして、自分よりも後に登場した目の前の男にしか癒せないと分かった時の絶望、嫉妬。
ベルナルドが話した言葉の端々には、様々な想いが詰まっているように感じた。
「必ず、幸せにする」
ベルナルドの想いを受けとった上で、短くそう言った。
紺碧の瞳と琥珀色の瞳がしばし交差した後、琥珀色の瞳の持ち主がふっと笑った。
「当然です。けれど、もし、シェイリーンにこれ以上涙を流させたら、本当に奪ってしまうかもしれませんよ?」
その笑みには、先程のような切なさは入り混じってはなく、吹っ切れたような笑顔だった。