偽りの結婚
「いくら王宮の中だといってもこんな場所で寝るなんて無防備すぎる。気をつけた方が良い」
「はい…以後気をつけます」
笑顔を向けながらも、どことなく逆らえない雰囲気を持つ男に少し驚きながら答える。
てっきりからかわれると思っていただけに拍子抜けだった。
ぽかんと見つめていた私に男は「ところで…」と切り出す。
「君は舞踏会半ばでここに避難してきたようだけど、この国の王子は見れたかい?」
何が楽しいのか、男はにっこりと笑顔でそう聞く。
「いいえ…お声は聴きましたけど私が座っていた席から壇上までは遠くて見れませんでした。ダンスが始まった時も、王子は一瞬のうちに女性に囲まれていらしたので、結局お顔を拝見できませんでした」
はっきり言って練習の成果を出そうと必死で、王子なんて忘れていたのが正直なところだが。