偽りの結婚
なぜウォール家の子息と・・・?
しかも、シェイリーンに手を差し出している。
ダンスに誘っているのか?
今や、踊っている令嬢の話に相槌を打つことも忘れ、厳しい表情で二人の動向を見つめる。
ラルフ様・・・?と訝しげに言う目の前の令嬢の話など耳に入ってこない。
耳元で何かを呟くウォール侯爵に、オロオロとするシェイリーン。
少し時間が空いた後、ウォール侯爵の手を取った。
そして、こちらへ近づいてくる。
気に入らない・・・
シェイリーンの細い腰に回される手、縮まる二人の距離。
チリチリと胸が焦げる様な、とても不愉快な感覚に襲われる。
それは、まぎれもない怒り・・・
自分の中に、こんなにもどす黒い感情があったのかと思うほどの嫉妬・・・
シェイリーンに関しては独占欲が先行するラルフは、今すぐに二人を引き離したい衝動にかられた。
やっとのことで曲が終わると、ラルフはシェイリーンの元へ向かおうとする。
しかし―――