偽りの結婚



「ラルフ…様?」


呼びとめる話題もないのにラルフの名を口にする。




「ん?」


ラルフは優しく微笑みながら答える。

途端切ない気持ちにかられる。

密着してドキドキと煩い心臓がラルフに聞こえまいかと心配していたことなど忘れ、もうその腕の中に戻りたいと思う自分がいる。



大きな手で抱き寄せられ、触れそうな距離から香るラルフの匂いに安心し。

王子としてのラルフが向ける笑顔でも、自分に向けられる笑顔に胸がキュッと締め付けられる。


それがラルフと会うのが最後だと思うと尚更で…

仮面を付けていたからかそれとも最後のチャンスだと自覚していたからか。



そう…だから、言ってしまったのかもしれない…








「好き」





一筋の涙が伝うのも気にせず、気付いた時には口にしていた。




刹那――――

ラルフが息を飲む音が聞こえ、深いブルーの瞳が驚きで見開かれる。

全ての喧騒が消えお互いがお互いの瞳を見つめる。



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