偽りの結婚
「あの…ダンスに誘っていただいてありがとうございました。ではこれで…失礼します」
ラルフの返事など聞く勇気もなく、一方的にそう告げ小さくお辞儀をする。
そしてクルリと方向を変え、王宮の門へ向かうために歩き出した。
もう…これでラルフとは会うこともない。
けれど想いを告げることができたのだ。
これで、ラルフへの想いを諦める事が出来るのかしら…
まだズキズキと痛む胸を抑えながら、門への道を歩く。
しかし次の瞬間…
パシッ―――
自分の腕を掴む、大きな手。
え…と思った時にはすでに遅く、グイッと引き寄せられ正面から抱き込まれる。
誰に…なんて分かりきっていて。
その人物は片手で腰を引き寄せ、私を腕の中に閉じ込める。
「答えは分かっている?なら、なぜまた去ろうとする…“シェイリーン”」
私を抱き寄せた人物、ラルフは首元に顔を寄せ耳元で囁く。
「っ…!!なっ何を……」
ヒヤリとした冷たい声にビクッと体を震わせる。