偽りの結婚
「本は君の家の書庫のものなのかい?」
さっきからこの人は何が言いたいのだろうか。
本に興味があるわけでもなさそうなのに、やけに話に食いついてくる。
男の意図が掴めないまま「いいえ…」と答えた。
「私の家の書庫はとても小さいので友人の家の書庫を利用させてもらっています」
スターン家にある書庫は書庫と言ってよいのかすら怪しい。
昔はちゃんと書庫室があって、それなりに種類もあったのだけど、ハロルドが亡くなってからは一部が売られ、残りは屋根裏に追いやられてしまった。
「友人の家とはどこの家だ。そこの書庫は君を満足させられているのか?」