偽りの結婚



「大丈夫よ、私達も今来たところだから。ねぇ?あなた」

「あぁ、ちょうど今しがた来たところだ。気にすることはない」


リエナの隣に座るエドワードが朗らかに笑う。




「良かった…次からは気をつけます」


ほっと胸をなでおろしながら私のために用意された席に着く。






「あら、ラルフはどうしたの?」


私が一人で食堂に訪れたことを不思議に思ったリエナが、疑問を口にする。



ギクッ………

どうしよう…女性のところへ行っている事など伝えられない。





「えっと…今日は出かけるので食事には間に合わないそうです」


二人の結婚を祝福してくれた手前、波風を立てるわけにはいかず当たり障りのない返答をした。




「まったく、しょうがない子ね。こんなに可愛い奥さんが待っているというのに遊び呆けているなんて」


ははは…と乾いた笑みをうかべるしかなかった。





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