偽りの結婚
「まったくだ。私が新婚の時など毎日時間通りに公務を終わらせて帰ってきていたがな」
「エドワードは真面目だったものね。結婚した時から一緒にいる時間はつくってくれると約束してちゃんと実行してくれていたのよ?」
仲睦まじくエドワードに寄り添いながらリエナは嬉しそうに話す。
これが普通の夫婦よね。
けれど私達の場合、互いの私情に立ち入らないことが約束だもの。
「お二人はお互いを愛していらっしゃるんですね。…羨ましいです」
「ごめんなさいね、ラルフにも奥さんを大事にするように言い聞かせなきゃいけないわね」
リエナは先程の私の言葉の裏に、新婚にもかかわらずラルフが帰ってこないことを寂しく思っていると捉えたようだ。
そういう意味で言ったのではないのだけど…
肯定も否定もできずに、黙ってしまった。