新アニオタ王子


ワインをもう一杯ずつ飲んだ後、タクシーで斉さんが部屋をとっているホテルへ移動する。



部屋につくと

すぐにシャンパンのルームサービスが運ばれ

あたし達は

今夜の二人の記念にグラスを合わせた。



斉さんがなぜ、すぐにあたしを抱こうとしなかったのか

あたしにはその理由も

なぜ、デートの回数を重ねて今日をその日にしようとした理由も分からない。


ただ、体の関係を持てばずっとあたしに尽くしてくれるだろう。なんて考えていたのに…

やっとその日がきたというのに…


今日に限って香月さんの言葉が…


岡本の顔が浮かんで…

デートに集中できないでいる。

生真面目に尽くしてくれる斉さんに対して失礼な状態であることは分かっているからこそ

早くこの邪念を払いのけたいのに


今日のあたしはやっぱり

ちょっと

おかしい…。


「マユ、君を愛してるよ」

その瞳にあたしだけを写して見つめてくれるのに

笑顔も返す事も出来なくて
体さえ強張る。


「緊張してるのか?」

あたしの頬に触れながら
探るように聞いてくる言葉も


聞きたくない程

段々…

岡本の顔ばかり…浮かんで
くる。


誰かとデートしている最中に他の男の顔が浮かんでくるなんて…

どうかしてる。

思い浮かべたくないあいつの顔を思い出せばだすほど
罪悪感に似た、嫌な胸のざわつきが胸を締め付ける。


悪い事なんかしてないのに…

男となんか

数えきれないくらい寝てきたあたしが…




誰かに触れられる事を嫌だと感じてる。




岡本正寿‼

お願いだからあたしの頭の中から出ていってよっ…‼


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