アクアマリンの秘密
「…自分が母親の魔力を吸ったせいで、母親の命を縮めたのよ?
私は…どんなに魔力を持っていても…助けられない。何も。
この無駄な魔力なんて…いらないのよ!!」


本当はとっくの昔に限界だった。


偉大な魔法使い、『有坂華央』
唯一無二の力を持つ、ヴァニティーファウンテンが誇る宝。
そう言われ、そう崇められて…作り上げられた、自分だけど自分じゃない存在。

それなのに…母親さえ救えない。
私が生まれてきただけで…母の魔力を吸っていたことに最近になって気付いた。
元々病弱な人ではなかったのだ。
私が生まれてきたせいで…私の魔力はより強大になり、母は弱っていった。
母を死に追いやったのは私の存在なのに…その私は母を救うことすら出来ないなんて…。

どんなに敬われても、心が乾いていく。
そんなのが欲しかったわけじゃない。
全ての人から尊敬されるような、特別さなんて最初から欲しくなかった。
私は…



「魔力なんて欲しくなかったわ…。」


私はただ…自分のままでありたかった。
自分らしく…生きたかった。


こんなに強大な魔力があっても…欲しいものなんて手に入ったことがないわ。
この魔力ゆえに…欲しいものは遠ざかっていく。


友達や恋人が、当たり前のようにいてくれる自分に憧れた。
ただ笑って話せる、そんな友達。
私の全てを受け入れてくれる優しい恋人。

そんな存在が…欲しかった。
でも…。


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