レンズのスガオ
「じゃ、おれだって今は関沢剣汰だよ?」
………………。
「うわ、泣かないでよ!おれ今関沢だってば!関沢剣汰は女の子が泣いた時の対処法、知らないの!!」
「私だって…スキで涙出したわけじゃないし…。私も…今佐藤詩唯だから…涙のコントロールなんて出来ないし…。」
はぁー。
なんて情けない。
成績優秀、普通の女子高生佐藤詩唯が、親しくもない男の前で涙、ねぇ。
理由は簡単、今までこんな心境になったことがナイから。
でもこの涙は、きっと仕事が終わった後の涙と成分が似てるだろうなぁ。
「ちょっと泣かないで?おれ困るんだけど。こんな人気のない教室で女の子泣かせちゃったなんてさ。」
「…ごめん、もう大丈夫。」
「大丈夫じゃないじゃん?」
「私お客さんじゃないの。キモいこと言わないで。」
「キモいとは失礼な…」
次の瞬間、何が起きたか、さっぱりわからなかった。
だって今私は佐藤詩唯なんだもん。