Maidoll Factory
暇な時じゃないとこういう事は集中して覚えられない僕としては、外の雨は違った意味で恵みの雨だ。

何日降り続くか分からないけれど、雨の間におやっさんから色んな知識を吸収しようと思う。

「いいか、トオル」

両手で少しずつ形になってきた魔力の塊を保持しながら、おやっさんが言う。

「魔法エンジンは、言い方を変えれば人工生命だ。肉体を持たないが、こいつぁ母親の胎内から生まれてくる赤ん坊と一緒なんだ。赤ん坊はな、生まれてくる時オギャーと泣くが、あれは『辛い世の中に生まれてくるのが悲しくてオギャーと泣くんだ』なんて言った奴がいたそうだ」

そんな事を言うおやっさんは、どこか怒っているようだった。

「そんな事ぁ絶対あっちゃいけねえ。生命ってのは…子供ってのは世界中に望まれて、祝福されて生まれてこなきゃいけねぇものなんだ。望まれずに生まれてくる子がいちゃいけねぇ。それはメイドールだって同じだ」

おやっさんの皺だらけで、ゴツゴツした手が、この上なく優しく魔力の塊を包み込む。

「だから魔法エンジンを造る時は、語りかけてやるんだ。生まれてきて有り難う、もう少しだ頑張れ、生まれてきたらみんなでお祝いしような、だから頑張って外に出ておいでって…医者が母親の胎内から、赤ん坊を取り上げる時のようにな」

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