揺らぐ幻影
盛ると痛むよねー
逆毛を立てることで、地肌に負担がかかっていると薄々気付いている。
また少し前には髪の毛の中に詰めるコームや綿みたいな物が販売されていた。
しかし、どうもはみ出ていると決まりが悪いので、なかなか手を出せなかった結衣だ。
街中のショップ店員さんのぽっこりした後頭部に憧れ、夏にパーマをあててみたけれど、
やはり手先が器用でないとドライヤー時に活かすのが難しかった。
はあ、
服コってなんであんな上手なんだろ
でたらめな巻き髪を掻き交ぜて、結衣は左右が反転している凡人を見つめた。
十五年付き合ってきた人――
近藤は自分のような女に好かれて嬉しいのだろうか、可愛いと一センチでも感じてくれているのだろうか。
そんなことが気になってしまう、気になって気になって不安になって……――だから鏡が気になってしまう。
くるんくるん。
確か数年前は重ためのローレイヤーヘアが流行っていた。
しかし、そのような梳かないヘアスタイルはそれ以前からすれば、ひどくダサい象徴であり、
シャギーにして、レイヤーを入れて、段をつけて、なんて美容院で注文し、
ウルフカットやくびれヘアがやたら主流であった。
なので、今結衣がしているボリュームある巻き髪が いつ古くなるかは謎だし、
現に外国の赤ちゃんのような綿飴に似たゆるめの髪へと、
オシャレに敏感な人はシフトチェンジしているよう。
ローライズが流行った時に、股上が深いデニムはダサいと言われたものの、
センスが良い人ならばブームなんて無関係で似合っていれば良い、それだけだ。
『たかが』に流される結衣のような子たちも、後数年すればオシャレが分かってくるのだろうか。
うーん、迷う
結局いつものままがしっくりし、迷走するだけで終わったヘアスタイル研究のように、
恋をすると女の子はオシャレに試行錯誤して頑張るものである。
微笑ましい向上心。
今日はホットカーラーより、コテが合っていると判断できただけ良しとした。
探究心に比例して、直接星が輝けばいい。
キラキラした夜空の煌めきは、きっと世界中の乙女による努力の数だ。
…‥