揺らぐ幻影

テーブルにノートや教科書を広げて勉強会に励む女子グループ、

買った服を見せあいっこするWデート組、窓辺のカウンター席に座り通行人のファッションチェックをする男子軍団、

彼ら青春メンバーで満席の店内だと、会話なんて聞き取れやしない賑やかさだ。

卒業した大人たちからすれば高校生がキラキラして見えるのは、

勉強や友人、恋愛に一生懸命だからなのだろうか。


田上結衣も例外なく片思いに力いっぱい頑張る現役女子高生だ。

  私……性格悪いな

こんなにも結衣の心に深く刻まれるあたたかな言葉をくれる友人だというのに、

なぜ好きな人ができたと、たった一言が口に出来なかったのだろう。


  私 なかなか幸せ者?

  なんで、言えなかったんだろ

  ちゃんと“友達”、ウケる

あんなにも誰かに打ち明けることが怖かったのに、それを簡単に振り払ってくれて、

初恋ビギナーの弱音を十倍の笑いで励ましてくれる二人が嬉しい。


何か裏技を使ったのかと疑うくらい、ゲリラ豪雨後の晴天ばりに結衣のモチベーションは上がった。

「イツジーくらい頑張る!」


不安なんてなかった。
愛美と里緒菜は友人の恋心を安く見て、故意に噂にするはずがないじゃないか。

素直になるといつの間にか笑顔になったのは、きっと自然現象だ。


「協力するし。てかこの私が応援してやるんだから頑張ってよ」

「手伝ってあげても良いよー成功したら奢ってもらうから」

ここで、素晴らしい青春名台詞――『頑張ってね』とか『うちら味方だよ』とか言わないあたり、

ますます二人が友人で良かったと結衣が実感する瞬間だ。


真剣味がなさそうで、実は頼もしい言葉に泣きたくなる。

無償に安心を提供してくれるなんて、逆に卑怯ではないか。

頼って甘えて大丈夫なのだと安堵すると、安い彼女は単純に涙が溢れそうだ。


相談できる仲間がいることは、経験値ゼロの結衣にとっては余計によき後援者になるはずで、

女友達のありがたみを実感するには十分すぎる一日となった。


暗闇には無数の光、それは親近感のある輝きだ。

今夜はプチプラな星型ラメ入りのマニキュアを塗ったような可愛らしい空だった。


…‥

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