揺らぐ幻影
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コンビニ袋を提げた徹夜明けの人が怠そうにパンプスを鳴らして歩く道は、

お年寄りのお散歩コースになっている道でもあり、

窓の外にあるそんな平凡な朝を見てから、結衣はドレッサーの前に腰掛けた。


  好き、だし。近藤くん

  服コに負けない、ほら、可愛い子になりたいし

通常六時半に起きるのだが、老人並に一時間も早い五時半に起きていた。

一見どうってことなく思えるも、彼女はファミリーレストランで夜の十時まで働いており、

帰宅するのはおよそ十時半、

そこから晩ご飯や宿題、お風呂やメールをすれば、髪が長いこともあり寝るのは夜中の一時を余裕で過ぎてしまう。

若いとは言え、短い睡眠時間は体力的になかなかハードだ。


昨日はアルバイトがなかったけれど、放課後の女子会議の余韻で興奮し、なかなか眠れなかったせいで余計に怠いのだけれど、

頑張ってベッドにさよならをした。


  頑張ろ

そう、早起きの理由はメイクの仕方を変える目的だったのだ。

普段より下地を小まめにパーツ分けしてから叩き込み、きっちりとファンデーションを薄く伸ばせば、

つるつるの肌になるはずだ。

いつもはアイラインをがっつりと一筆で引くのだが、時間にゆとりがあるので慎重に点を描くよう塗り、

今までよりもコームを通したマスカラを重ねたまつ毛の際に、セパレートの付けまつげを装着する。

そうして黒いアイシャドウを目尻にぼかして乗せれば大きな目が誕生する。

チークとハイライトも程よく踊らせ――


このような十代のお化粧(極めて厚化粧)は、世間でもったいないと言われるのだが、

恋に敏感な年頃だからこそ可愛くなりたいと一生懸命メイクをするのだと思う。


しかし最近は濃いと評判があまり良くないことを分かってきたのか、

世の中は少し薄いメイクがブームになってきている。

というものの、メイクに興味がない人には分からないだろうけれど、

薄そうなメイクも実は薄〜い付けまつ毛をしていたり、

自然なアイシャドーをこれでもかと叩き込んでいたりするので、

ナチュラルと呼べないのかもしれないけれど、そのような感じで女の子の可愛さには秘密がある。

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