揺らぐ幻影

ファッション関連は静香がちらつき落ち込んでしまうため、

新しい話題を提供するつもりが、

《帰り買い物した? 私は明日服買う》と、

意気込みとは違う探りを入れるメールを、結衣は送ってしまっていた。


展覧会に行っただけなのか、あるいは少し寄り道をしたのか、

気になって不安で、どうしたらいいのか分からない。


そして、気付いてしまった。

首の骨を抜かれたようにからだの中がおかしくて、くらりと目眩を起こしそう。


  、嫉妬……

発見した醜い正体は嫉妬だった。

何の生産性もない嫉妬。
何のメリットもない嫉妬。
負の要素しかない嫉妬。


《主催の人に打ち上げ誘ってもらった。静香ちゃんと雅と行く。才能盗んでくる笑》

国民的人気アニメの影響でF組の静香を皆が静香ちゃんと呼ぶ。

だから近藤が静香にチャンを付ける点に意味はないのに、

仲良しクラスメートなだけなのに、狂ったように羨ましくて堪らない。

よーぺーと呼んで静香ちゃんと呼ばれる関係が憎たらしい。

オレンジ色の髪の子に狡いと腹立ってしまうのは、紛れもなく嫉妬だ。

《良かったね。おやすみ》と、素っ気なくメールをする結衣は、あまりに馬鹿げている感情の制御ができない。



  私ぽこりんと遊んだことないのに……

  、ずるい

私服姿の近藤と遊ぶ予定がある静香が羨ましかった。

結衣だって放課後二人乗りをしてどこかに行きたいし、

静香を呼ぶように『結衣ちゃん』と言われてみたい。


  、静香ちゃん嫌い

  ……嫌い

羨望が切なさに変わるのは、自信がないからだ。

同じ教室で気さくにあだ名で呼び合い、可愛い外見だけではなく性格も明るそうで、

そんな彼女は服飾コースの優等生、市井と並ぶ実力ある静香は近藤と同じ夢を持っている。


何一つ結衣は勝てていない。
役立つ武器が何もない。

せっかく市井に彼女になると宣言をしたのに、近藤の横には静香が一番似合う気がした。


もやもやした不安が育つ。
ふわふわ揺れるお花の遊び心が腹立たしかった。

夜の暗さは、乙女心の嫉妬によって濃度が違うのらしく、

今夜は灰色の雲で月が隠れていた。

…‥

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