揺らぐ幻影

朝に姿を見れて、挨拶を交わしたなら、さぞ一日の始まりは幸せな気持ちになれることだろう。

それに結衣はメールよりも直接会話を重んじる派のため、

今の状況は近藤に話しかけに行くべきである。



「話ん邪魔なるからいー」

目が合わないよう視線を落として、悔しさに握ったスカートはシワを作る。

そう、逃げるように大股で歩いた結衣は教室に滑り込んでしまった。


「ゆーいー?」

追いかける愛美が不思議そうに首を傾げるけれど、本音など言えやしない。

  静香ちゃん可愛いもん、

  ……オシャレ

静香と結衣、好きな人に見比べてほしくないと思う心の醜さなんて知られたくない。

そんな人間なんて軽蔑される。


顔の可愛さや胸のボリューム、腰のくびれや制服の着崩し方、

全てに華がある子の隣に並んで、近藤に比較されたくなかった。


  性格わる、

こんなに嫌な性格だとバレたら、MAYURIはMARIになるだろう。

結衣なんか要らない、友人にそう呆れられることだろう。


せっかくのお天気も気分が乗らないと、太陽なんて姿がない雨空と同じだったし、

ぷっくりしたアイシングのように可愛らしい雲を見ても、

美味しそうだなんてメルヘンに感じるゆとりがない。


聞いてみたい。ヘクセンハウスだって同じじゃないか。

粉糖と卵白を混ぜた物を糊にすると、甘い癖に硬くて歯が立たず、お菓子の罠は怖いものだ。


授業中イライラしたのは、生理前だからかなと分析した。

どうして性別が女だと毎月毎月お腹が痛いし、やたら短気になるし、すっごくお腹がすくしニキビが出来るし、

それからお泊り会や花火大会、たいてい楽しみにしているイベント事に被りイマイチ満喫させて貰えないし、

そんなことばかりで、時々男子が羨ましい結衣だ。


  静香ちゃんヤだな

  やだな……

どうして自分の感情がコントロール出来なくなるか。

これは女に生まれた宿命なのだろうか。

いいや、この苛立ちはPMSとは別だと分かっている。


嫉妬は悪い魔女に相応しいのなら、

とてもじゃないが、ウサギのお財布や携帯電話のストラップが似合うキラキラお姫様には成り上がるれない。

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