揺らぐ幻影
テスト前の授業になると、数学では問題に出すようなタイプの例題を重点的に解かすし、
現国では出題するであろう部分をやたら音読させるし、
英語ではわざとらしいくらいに問いになるらしき単語に波線を引きまくる。
そうやって先生たちは何らかの形で救済処置をとるため、
普段サボる生徒もこういう時だけはちゃっかり挙手して『テストに出るの何?』と積極的に発言してやる気を見せるものだ。
ちなみに、日頃勤勉な方には彼らの調子の良さが不愉快極まりないだろうし、
さぞ理不尽なことだろうが世の中そんなモンだ。
「ねー先輩見に行きたい!」
赤点脱出にはしっかりノートをとるべき時期に何を吐かすか高校生、
「いーね、目の保養したーい」
いくら常に皆と一緒が女子高生をする人間の義務だからノーと言えないさだめだとしても、
後数分で休み時間が終わるため、賛同する子らは保護者にとって嘆かわしい存在でしかない。
「えーテストは?」と、友人に反発する意志を示すとは、声の主、
学生としてはなかなか勇者だ。
なぜなら、オンナノコに生まれた場合、いつも空気を読むことが第一前提だからだ。
仲間の発言は絶対であり、それは協調性であって女友達度合いの象徴として捉えられているため、
決して『媚び』や『はみ出るのが怖いんだ』みたいな類いのワードをティーンエイジャーに言ってはならない。
微笑ましさを黙認してやるのがレディーの決まり事であろう。
つまり現役女子高生、グループ内のお喋りは同調がルールらしい。
失礼、前言撤回しよう。
制服を着た少女らは仲良しな親友たちとは仲良しなのだから当然価値観が合って普通、
従って仲良し組の意見には仲良しであるがために自然と頷いてしまうものらしい。
だって仲良しだから。
このような可愛らしい友情は教室に溢れているなんて、真に素晴らしい絆である。
たとえ浅さに気付こうが、本気で突っ込んではならない。
そもそもオンナノコの友愛を分析するなんてナンセンスだ。
いろいろある、その一言がすべてを物語っているので流しておこう。
そう、たくさんのクラスメートの中、はみ出すことが平気な女が居た。
「授業始まるじゃん?」
もちろん結衣だった。