揺らぐ幻影

「テストより先輩」
「ほんま。勉強とか余裕」

「てか赤点ギリ部分点稼げる余裕」
「そーそ。うちら可愛いから先生とか甘採点じゃん」


誘いを断るなんてママ友会では追放される最近の例にならい、

女子高生会でも反論は友情の裏切り行為だとされがちな世間、

「いやチャイム鳴るし」と、結衣は平気で口答えできる。


けれど、愛美が結衣の背中を押せば、里緒菜が結衣の腕をとり、

そうして強制送還されるかの如く、E組の教室から名もなき先輩ストーカーへと連れ出された。


冷たい風がホッペの皮膚を引っ掻くので、非常に不愉快だ。

ぬくぬく屋内がいいに決まっている。
だからいつも胸が苦しくなる。

無償の優しさは痛い、知ってる?

友人二人は先輩に興味がない。
ただ、根拠が謎の親友を気分転換させてくれようとしている。

見返りを求める偽善が世の九割を占める中、残りの一割は愛が溢れ過ぎて、

ドライな結衣は返し方が分からない。

幸せは時々、作詞への道を教えてくれるらしい。



黒と白の丸が先陣きって走れば、たくさんの人がそれを追いかける。

野太い声が起こる度に四角の前に人だかりができる。

「先輩ー」
「頑張ってー」

三人娘はサッカーをしている二年生たちを運動場の端で眺めていた。


これぞ女子高生の定番。
授業をサボってカッコイイ先輩ウォッチング。

気をつける点は体育教師にお説教されないようにすることと、女子先輩の反感を買わないようにすること。


入学してしばらく経ち学生生活に慣れる頃から、

結衣らは二週間に一回の頻度でイケメン捜しをしていたので手慣れたものである。

また中学の時は放課後部活男子の応援をした経歴もあり、もはや得意技に近い。


愛美と里緒菜、テストは大丈夫なのだろうか。

しつこく気を遣わせてしまう自分が情けないし、申し訳ない。

だから全く乗り気ではなかったけれど、彼女は腐っても女子高生、

協調性は備わっているので、二人がガチャついている雰囲気の中、

しんみりオーラを漂わせるのはオンナノコポリシーに反していることを分かってしまっているため、

「先輩カッコイイー」と叫ぶ。

それが結衣、それが安い友情返しだ。

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