揺らぐ幻影
だから結衣は、「先輩カッコイイ!」と大声を出した。
それが二人に対する精一杯の感謝の仕方だと思う。
一番人気の乙女が彼らに手を振れば、嬉しそうに手を振り返してくる様子を茶化すのが捻くれガールの愉しみだ。
「完璧アホ」
「ナルシスト」
「せんぱい! かっこいー」
「カッコわ〜い」
格好悪いを濁し、ひたすら三人で『かっこわーい』と叫んで、
こういう感じ、青春してます的な馬鹿さ加減が最高に楽しい。
「格好悪いって言われて喜んでる」
「結衣選ぶレベルだから仕方ない」
そうなのだ、近藤に恋する前の結衣はこうやって低レベルな遊びをすれば充実した毎日だと思っていた。
現に今、愉快な愛美と痛快な里緒菜と居れば女子高生らしいハッピースクールライフの完成で、
――なのにまだ欲しがる。
友情関連は満たされているのに、恋愛要素を熱望するのはさもしいのだろうか。
近藤が好きで、好きだ。
自信がない。
だって、先輩に可愛いと褒められても近藤は?
好きな人に好かれなきゃ意味がないのだ。
静香のような子がタイプだったら?
見た目に共通点はない。
また彼女の性格は知らないが、とりあえず良い意味で明朗・悪い意味でチャラい印象がある子で、
どちらにせよ結衣とは似てもいないのだから、やっぱり勇気が出ない。
また頑張ることが無駄に思えてしょうがない。
……。
せっかく女友達に恵まれて励ましてもらえているのに、
授業をサボった本当の目的は果たせなかったことが申し訳ない。
例えば結衣が悪い魔女にお願いして、静香の顔と性格に変えてもらったとしても、
心の中にあるモヤは晴れない。
要するに、この恋を粘れない原因に容姿や中身は関係ないようだ。
どうしたら近藤が好きと萌える女の子になれるのだろうか。
自信、勇気、気合い、足りなさ過ぎて分からない。
いつも愛美と里緒菜を頼れば問題は簡単に解決したのに、全然楽にならないのは何故。
逃げるばかりしていせいか、元居た場所が分からなくなってしまった。
手懸かりになる楽観的な自分の性格さえ、見失ってしまった。
でも、この歳だとインフォメーションのお姉さんを頼れない。