揺らぐ幻影



そんなこんなで、今朝の作戦達成における己の頑張りを結衣は自分で褒めてあげた。

実際行動してくれたのは愛美と里緒菜なのだけれど、

彼女は褒めて伸びるタイプだから、自分くらいは甘やかしてやることにした。


今日は雲の流れが無駄に速い。

登校する時に向かい風だったにもかかわらず、下校する時にも同じく逆風だなんて、

もはや神様が意地悪く風見鶏に命令しているとしか思えない。

どうして自然は上手くいかないのか。


結衣と愛美と里緒菜の三人は自転車通学なので、余計にアンチ向かい風派だ。

なぜならせっかくセットした髪も乱れ、ペダルを漕いでもなかなか進まない上に、目が乾燥し痛くて――つまり、やってられないせいだ。

追い風ならば、電動自転車並に楽々移動できるのでウェルカムだというのに、

ストレスフリーの社会はまだまだ遠いらしい。


放課後の学内は、バスや電車を逃したくない生徒の足音で賑わっている。

部活の準備に向かう爽やか君、終わりなき雑談で校舎に留まるミーハーちゃん、宿題居残りに嘆くサボり魔さん――


三年生と一年生を比べると体格も違うが、何より制服の馴染み具合が全く別だ。

下級生は少し頑張ってオシャレをしたがり、逆に上級生は良い意味で手抜き感が見られる。

当然、前者である結衣は頑張って頑張って頑張っておめかししていることとなる。



どこからか里緒菜が仕入れた情報によると、ターゲットである近藤は電車通らしい。

彼女はその手のことに追随しており、どのクラスに何人イケメンが居て何人美少女が居るかくまなくチェックしているため、

信頼度はある。


マドカ高校は服飾コースの華やかさがやたらと県で有名だからか、

歩いて三分程度、最高の場所に駅が二年前にできた。


  チャリじゃないんだ

  電車なんだ


好きな人は電車通学。
たったそれだけの情報でも、偶然奇遇作戦には大変有効だ。

交通手段を知っているか知らないかでは、状況が大いに異なってくる――なんて、

大袈裟だと呆れてはいけない。
あくまで三歳児を持つ保護者目線で彼女らを見守ってあげよう。

とにかく登下校アイテムも立派な役割を持つ。

なぜならー―

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