揺らぐ幻影

彼女たちは健気に悪く言えば幼稚に、些細な情報でも作戦に盛り込み、頑張ることができるからだ。

政治家になれば国民の意見を反映できる素晴らしい偉業を残せるかもしれない。

社会に貢献できるグローバルな会社を起業すれば、世界中から支持されるかもしれない。

なんてオーバーな例え話を持ち出すことが、高校生らしい笑いの引き出しでもあり、

制服を脱いだらシラケるノリ、学生同士なら爆笑のノリで、

それが世間と女子高生の微笑ましい温度差だ。


「早く! ゆいピョン!!」

「なんで帰りの支度してないの!! アホゆいピョン」

「待ってよ、てかピョンってキャラじゃないしー、意味不」

喧しい三人組は元気いっぱいが取り柄の女子高生。

電車通と自転車通の場合は教室から靴箱、校門までしかチャンスがない。――いいや勝負時だ。

お気付きの通り、明るく言えばストーカー全開作戦とも名付けることができる。


  先生だいすきっ

恋愛対象は中三から三十五歳までで中年男性に興味のない結衣は、

担任に入学以来初めて心から感謝した。

帰りの会を短縮する傾向の強い面倒臭さがりな先生でなかったら、近藤のクラスが先に帰ってしまう。

その点、E組の担任は適当主義なので、ホームルームは即効終了する。


従って、このように好きな人が教室から市井と歩く後をさり気なく待ち伏せして、

何気なくつけることが可能なのだ。

――既に作戦は実行中。


ターゲットの尾行、これが男女逆ならば、

ご近所の誰かが危ないと察知し、警察が介入する惨事となっているのだろう。


世の中、説明しがたい価値観の定番がたくさんある。

例えば、付き合っていない男子が女子の部屋に行っても何も言われない場合が多いが、

付き合っていない女子が男子の家にお邪魔すれば、軽率だと咎められる不思議。

そんなことは常識で普通なんだとか。いまいち結衣にはよく分からないけれど。


むしろ、今はそんな女の子らしいパジャマトークに興味はなく、頭の中は大好きな近藤のことだけだった。

  ドキドキする!

  ドキドキするし!

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