揺らぐ幻影

不安で不安で泣きたくなってきた。

近藤は視野が広い。
高校、勉強、アルバイト、友人、家族、中学、そしてデザイン、そこに結衣はいない。


普通にセンスが合うクラスメートと展覧会に行き、普通に飲み会に参加しているだけなのに、

どうして普通が悲しくなるのだろうか。


彼が静香を好きだなんて一言も聞いたことがないというのに、

噂にだってなっていないというのに、この悲壮感、この被害妄想は何なのか。


馬鹿げていると分かるのに、二人が恋に落ちたらどうしようと焦る。

そうなると恋愛研修生は誰かに頼らずにはいられない。

だから結衣は里緒菜に電話をしたのだが、ヤキモチに引かれたくなくて、突然連絡をした訳を伝えられない。

自分の歯痒い気持ちを口にすることが出来ないでいる結衣は、

里緒菜からすれば内容が分からないし、迷惑でしかないというのに、

それでも彼女は大丈夫だと何十回も唱えて励ましてくれた。


いっそのこと大丈夫という声をボイスメモに残して、

ひたすら聞いていたら良いのではないかというくらい、

結衣にとって彼女の言葉は神様の域に達していた。


『大丈夫だって、ヨシオちゃん見習いなって』

冗談混じりの優しさが好きだ。


同い年、里緒菜は大塚の件で結衣に嫉妬したのだろうか。

恋をすると女は皆、誰かを妬む生物なのだろうか。

その説が正しいなら、性別を武器に特別嫉妬しぃな訳ではないと開き直ることが可能となり、

不気味な執念深い性格に対する自己嫌悪の手間が省ける。


通話を終え、また深いため息をつく。

なんだかリビングは空気が悪いので、結衣は自室に移動した。

  飲み、だけ?

  仲良くなったのかな

  席、隣だったのかな

  やだな

片思いがここまで苦いなんて思わなかった。


嫉妬は苦しい。
自分の浅ましさが浮き彫りになるから、貪欲な自分が気持ち悪いから、

できることならそんな人格が自分の中に居ることを知りたくない。


子供がぬいぐるみがないと眠れないかのように、

高校生の結衣はウサギのお財布を握り締めて眠りについた。

お花畑に行く途中で迷ってしまって、そこには暗闇しかなかった。

…‥

< 501 / 611 >

この作品をシェア

pagetop